SalesforceからHubSpotへの移行コストシミュレーション:どこで下がり、どこで増えるか
SalesforceからHubSpotへの移行を検討する際、最も揉めやすいのがコストの見積もりと回収期間です。実務では「月額の差分」だけで判断してしまい、移行費用・運用変更・教育コストの影響を見落とすケースが多く見られます。ここでは、前提を揃えたコストシミュレーションの作り方と、ブレを管理するための考え方を整理します。
コスト削減はゴールではなく、移行判断を「数字で説明できる状態」にすることが目的です。
1. まずは前提条件を固定する
シミュレーションの精度は、前提の粒度で決まります。最初に、以下の前提を決めます。
| 項目 | 例 | 補足 |
|---|---|---|
| 期間 | 3年 | 短期よりもTCOで比較 |
| 現行CRM月額 | 50万円 | 契約更改後の想定も反映 |
| 移行後CRM月額 | 25万円 | ユーザー設計の見直しを含む |
| 年次改定率 | 現行8% / 移行後5% | 契約実態に合わせて調整 |
| 初期費用 | 100万円 | 設計・移行・教育を含む |
金額はサンプルであり、自社の実数に置き換えることが重要です。
2. コストは「4つの箱」に分ける
比較を簡単にするため、コストを4つの箱に分けます。
| 箱 | 内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| A | ライセンス費 | 閲覧専用ユーザーの最適化 |
| B | 移行初期費用 | 設計・クレンジング・教育 |
| C | 運用コスト | 問い合わせ・権限管理の工数 |
| D | 機会損失 | 移行中の手戻りや停滞 |
AとBだけで比較すると、実態とズレます。CとDまで含めることで判断が安定します。
3. 3年間のシミュレーション例
前提を固定した上で、年次の累計を比較します。
| 年 | 現行CRM累計(例) | 移行後CRM累計(例) | 差分 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 600万円 | 373万円 | 227万円 |
| 2年目 | 1,296万円 | 733万円 | 563万円 |
| 3年目 | 2,109万円 | 1,207万円 | 902万円 |
この差分は削減見込みであり、前提が変われば上下します。
4. ブレークイーブン(回収期間)の考え方
回収期間(月)= 初期費用 ÷ 月額差分
例えば月額差分が25万円、初期費用が100万円なら、回収期間は約4か月です。ここに教育期間の遅延や移行中の並行運用を加味すると、6〜9か月に伸びるケースもあります。
5. 感度分析で「予備費」の根拠を作る
予備費を雑に10%で置くのではなく、影響の大きい変数を±20%で振って総額の揺れを確認します。
| 変数 | 振れ幅の例 | 影響 |
|---|---|---|
| データクレンジング工数 | ±20% | 初期費用が増減 |
| 連携本数 | ±20% | 設計・検証が増減 |
| 教育期間 | ±20% | 運用コストが増減 |
これにより、どこが不確実で、だから何%なのかを説明できます。
6. 数字以外に見るべき判断ポイント
- 編集ユーザーと閲覧ユーザーを分離できるか
- 既存の連携を削減・統合できるか
- 現場の入力ルールを再定義できるか
- 移行後の運用体制を置けるか
コスト削減だけでなく、運用負荷が下がるかどうかが重要です。
7. まとめ:比較の軸を「月額」から「TCO」へ
月額の差分は分かりやすい一方で、移行費用・教育・運用の影響は見えにくいものです。前提を固定し、4つの箱で整理し、3年TCOで比較する。これが、社内決裁を通すための現実的な方法です。
次のアクション
- 前提条件を社内で揃える
- 3年TCOでシミュレーションを作る
- 感度分析で予備費の根拠を作る
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